★上野・谷中
2008年06月13日
-修悦体- 日暮里駅のガムテープ芸術
修悦体ってご存知ですか?
私は、知りませんでした。
しかし、写真を見れば 「あーアレの事か」 と気づく方も多いはず。
場所は日暮里駅。
これが修悦体
遠くからでも、はっきりくっきりと分かります。
シンプルながらも、個性的。
しっかりとツボを押さえ、かつ調和のとれた気持ちよい文字。
では、もう少し近づいて見てみましょう。
ガムテープで形作られた、ガムテープ書体
この書体が注目を浴びたのは、2003年に行われたJR新宿駅の大規模な切替工事の時。
毎日多くの人が利用する新宿駅で、利用客が混乱しないように・・・と、駅構内で警備員をされている佐藤修悦さんが、分かりやすい案内表示を自作したのです。
当初は、無断で駅の番線表示を始めたのですが、駅員に褒められて許可が降り、正式に製作を始めました。
それがこのガムテープ書体のはじまり。
彼の名前から「修悦体(しゅうえつたい)」と名付けられ、一部のウェブサイト等で話題となりました。
カーブの部分など、細かい技が光ります
近づいて見なければ、ガムテープで作られた文字には見えません。
そうそう、なぜ日暮里駅なのかというと、佐藤修悦さんは2007年から再び工事中の誘導係として、日暮里駅で勤務されているからなんです。
日暮里駅に行けば、警備をするかたわら構内案内を作成している佐藤修悦さんにも会えるかも?
糸偏に感動!
彼のオリジナルフォントに脱帽です。
案内板を見て大騒ぎする私・・・ちょっと浮いていました。
佐藤修悦さんは現在53歳。
岩手県出身で、喫茶店勤務などを経て99年から警備員として働いていらっしゃいます。
特に美術の勉強をされたわけではないのがまたスゴイところ。
好きな文字は、シンメトリー。
まさに「日暮里」はぴったりじゃないですか。
「駅の利用者に喜んでもらいたいだけ」
謙虚な彼の素敵な作品は、日暮里駅を利用するだけでもれなく楽しめます。
これぞまさしく活きたアートですね。
2008年06月07日
アサクリック! 朝倉彫塑館 @台東区谷中
彫刻/彫塑家・朝倉文夫のアトリエ兼住居
朝倉彫塑館 あさくら ちょうそかん
ASAKURA CHOSO MUSEUM
ASAKURA CHOSO MUSEUM
数年前に観た、テレビ東京の「美の巨人たち」。
この番組は好きで時々観ているのですが、中でも印象に残っているものの一つ、彫刻家・朝倉文夫の作品「墓守」。
場所など詳しいことは忘れてしまいましたが、彼の作品が収められた元アトリエ兼住居の美術館に、いつか訪れたいと思っていました。
別の目的で訪れた谷中。
近くに彫刻館があると聞いて伺ってみたら、朝倉彫塑館でした。
なんと谷中にあったとは。
ちょっと嬉しいサプライズです。
朝倉彫塑館正面
朝倉文夫が暮らした谷中は、戦前の家屋などが多く残されており、古い町並みが心を和ませてくれます。
そんな谷中らしい雰囲気を満喫しながら谷中霊園の裏手に進むと、黒い壁が印象的な朝倉彫塑館に到着。
屋上にも作品があります。
ちょっとデジカメズームで撮影してみましょう。
ずっと座って・・・
何か感慨に浸っている様子です。
さて、彫塑(ちょうそ)とは何かと言いますと、彫刻のように削って形造るのではなく、肉付けをして形造るものなのだそうです。
知りませんでした。
この館の主、朝倉文夫は明治16年に大分県大野郡池田で生まれました。
19歳のとき、彫塑家の兄をたより上京、彫塑を学び、翌年に東京芸術学校(現東京藝術大学)に入学。
20代で大きな賞を受賞し、一躍世に知られることとなりました。
33歳で文展審査委員に任命。
38歳で東京芸術学校の教授に就任し、後輩の指導にあたりました。
もともとは俳句を志し、正岡子規に師事しようと願って上京したのですが、上京した当日はなんと、正岡子規の御通夜だったのでした。
ひょんなことから彫刻の道へ進み、若いうちからその道の才能が開花するなんて不思議な運命ですね。
そんな朝倉文夫が、東京芸術学校を卒業して住居とアトリエを構え、創作活動を始めたのがここ。
自ら設計・監督をして、8回にもおよぶ増改築を繰り返した後、昭和3年から7年の歳月をかけて新築し、現在の形となりました。
建物は、正面から見える鉄筋コンクリート造り(防水用のコールタールで黒く塗っています)のアトリエと、内部から望める丸太と丈をモチーフにした数寄屋造りの住居で構成されています。
天井の高い、西洋モダンのアトリエ棟と、純和風の美しい木造住宅部分。
中庭には自然の湧水を利用した素晴らしい水庭もあります。
なんとも不思議な和洋折衷ですが、実際に拝見してみると、とてもしっくりくるのです。
彼自身「アサクリック」と称した、独特の様式や居室のたたずまいは、一つの大きな朝倉芸術作品といえるでしょう。
「アサクリック」とは、朝倉文夫自身が作った造語。
おそらく、アサクラ+テクニック=アサクラ流技術という事でしょうか。
私はてっきり、アサクラ+トリックかと思ってしまいました。
トリックなんて、それじゃあまるで忍者屋敷・・・?
後姿
アトリエの屋上庭園からは、先ほど紹介した建物正面屋上に座っている作品の後姿を眺めることができます。
屋上に庭園があること自体驚きなのですが、なんと大木まで植わっています。
当時、朝倉文夫が彫塑塾を開校していたときに、屋上庭園を園芸の授業のため使用していたそうです。
野菜なども栽培していたそうで、土が浅かったため大根などが直角に曲がってしまったんだとか。
谷中の街を一望
高い建物がないって、気持ちいい。
写真は3階建てのアトリエ屋上ですが、2階にある東洋蘭の温室として使用していた「蘭の間」には、猫を題材とした作品が展示されています。
彼は動物、特に猫をこよなく愛し、多いときには自宅に15匹程の猫を飼っていたそうです。
猫に囲まれ、幸せそうな表情をした写真もありました。
「たま」「吊された猫」「よく捕たり」など、思わず頬がゆるんでしまうような猫のしぐさのほんの一瞬を見事に捉えたものばかり。
猫が大好きで、常にじっくりと観察していたからこそ創り出せた作品なのだと感じました。
「雲」
正面玄関の右側に佇んでいる「雲」という作品。
浅草寺の境内にも設置されているそうです。
谷中霊園沿いにぐるっとまわって、旧アトリエがある裏玄関へ。
裏玄関
旧アトリエの屋根に佇む作品が垣間見えます。
朝倉彫塑館は2001年に彫塑館の建物全体が国の登録有形文化財に登録されました。
さらに2008年、庭園が「旧朝倉文夫氏庭園」として国の名勝に指定されました。
彼の作品はもちろんのこと、建物自体も大変ワクワクするものでした。
建物自体が彼の大きな芸術作品だと感じます。
奇を狙ったわけではなく、造りは独特でもどこかしっくりと調和している・・・そのさりげないアサクリックには感動!
まるで、ちょっとした大人のアミューズメントパークでした。
少しでも興味を持たれた方、是非ゆっくりと時間をとって訪れてみてください。
■スポット情報案内
住所 東京都台東区谷中7-18-10
地図
時間 9:30-16:30
電話 03-3821-4549
休館日 月・金曜(祝日の場合は翌日)
年末年始(12月29日-1月3日)
料金 一般 400円
小中学生 150円
山の手線日暮里駅北口改札西出口から徒歩3分
2007年01月29日
上野の杜・韻松亭 鳥すき焼き
上野公園内にある韻松亭で
不忍池を見下ろしながら夜の食事を楽しむ
上野の杜 韻松亭
いんしょうてい
不忍池を見下ろしながら夜の食事を楽しむ
上野の杜 韻松亭
いんしょうてい
過去、お昼の会席料理を頂いた、上野の杜・韻松亭(←韻松亭の説明等についてはこちらの記事)ですが、夜のお食事も楽しんでまいりましたので、ご報告。
お昼の会席が、とても大満足だったので、夜メニューである「鳥すき焼きコース」も楽しんでみたくて、機会を狙っていました。
1月上旬の土曜日。
夜の部で、5時~の予約が取れました。
韻松亭
水打ちされた石畳が、訪れるお客さんを温かく出迎えてくれます。
玄関を入り、名前を告げて履物を脱ぎ、案内されながら、趣のある廊下を進んでゆきました。
お店はかなり広く、お座敷やテーブル席、もちろん個室も用意されています。
私が案内されたお席は、カウンター。
畳に腰かけ、掘りごたつ風に足を下ろします。
目の前からお料理が用意されるのですが、席からは一面ガラス貼りの壁があり、テラスや木々、少し横を向くと不忍池も見下ろすことができます。
5時からの食事でしたので、少しずつ日が暮れて、刻一刻と色味が深まってゆく風景を楽しむ事ができました。
今回お願いしたのは、「鳥すき焼きコース 銀杏 6300円」。
夜のおしながきは他にも、6300円~の会席コースや、鉄板焼き、お座敷天麩羅コース等があります。
お料理の一部のみですが、相変わらずの携帯写真を載せつつ・・・
・・・
・・
前菜に、ちょっとしたお鮨などがのった一皿。
茶碗蒸し。
そして・・・
こんがりと香ばしく焼きあがった手羽先。
まるで、何度も表面を熱い油をかけてパリッと焼き上げたかのような見事な食感。
もちろん、身は申し分なくジューシー!!
お料理に使われるのは、鳥取県、大山(だいせん)高原の大山鶏です。
次に、湯葉か鶏のお刺身が選べるのですが、ここは迷わず「鶏刺身」。
表面が軽くあぶってあって、肉の甘みと食感が楽しめました。
白味噌仕立ての椀物。
自家製の生麩が入っていて、とても満足の美味しさでした。
いよいよ、鳥すき焼き
肉厚に切られた鶏肉と、自生のクレソン、たまねぎ、自家製の湯葉や生麩が美しく盛られたお皿が登場。
景色も楽しみつつ・・・
お店の方が、丁寧に鍋を作ってくださいます。
まずは鶏肉を味わって・・・
肉厚の大山鶏、驚きです!!
柔らかく、でも歯ごたえがあって、もちもちしているんです。
あぁ・・・美味しい。
一口一口、しっかりと味わって頂きました。
次に、他の具と共に頂きます。
自生のクレソンはクセが無く、美味しい大山鶏にとてもよく合います。
つみれ鍋
こちらのコースは、なんと鍋物が二種類。
とても贅沢ですね。
あっさりとしたダシの中に、とろとろふんわりのつみれが、そ~っと投入されます。
柔らかく、口に入れると旨みがじゅわ・・っと上品に広がります。
そして、はかなく口の中でとろけてゆく・・・。
最後にご飯物。
鍋のお汁で「お粥」か、「うどん」。
もしくは、土鍋で炊いた「鶏の炊き込みご飯」の三種類から選べます。
(お料理の最初に、お店の方から聞かれます)
今回は、「鶏の炊き込みご飯」にしました。
上等な鶏の旨みがたっぷりと溶け込んだ出汁でつくる「お粥」も、とっても魅力的だったのですが、お昼の会席もそうであったようにお料理のボリュームがかなりあるので、残してしまうのではないかと心配して、唯一、お持ち帰りできる「鶏の炊き込みご飯」にしました。
大満足のお料理で、やはり量もかなりあったので、炊き込みご飯にして大正解。
土鍋でたっぷりと炊かれた熱々の、鶏の炊き込みご飯。
お茶碗にほんの少しだけ頂いて、残りはお持ち帰りにして頂きました。
そして最後は、デザート。
前回頂いた、お昼の会席「清流」でも楽しめた、自家製の麩饅頭を頂きました。
素敵な空間で、とても美味しいお料理を満喫。
上野の杜・韻松亭は、贅沢な時間を過ごせます。
■お店情報
住所 東京都台東区上野公園4-59
地図
電話 03-3821-8126
時間 11:00 - 16:00 / 17:00 - 23:00
定休 年中無休
2006年07月22日
韻松亭 上野公園
上野公園内にある、歴史あるお店で豆菜料理に舌鼓
韻松亭
いんしょうてい
いんしょうてい
明治8年創業。140年もの歴史がある料亭・韻松亭は、上野公園の大噴水から京成上野駅に向かう桜並木の大通りの途中、右手にあります。
当時、明治の文化人たちに愛され、日本画家である横山大観は、ここで心置きなく呑み明かしたいと考え、お店を買い取ってしまった事があるほど。
その頃は、俳句や長唄などの会が多く開かれていたそうです。
韻松亭では、不忍池と緑を眺めながら、食材にこだわった目にも美味しい豆菜料理が頂けます。
こだわりである豆は、100%国産の大豆「タチナガハ」を使用し、自社工房で全て手作りされているそう。
豆から全てが生まれるというだけあって、湯葉・呉汁・豆乳・おから等、余すことなく豆を楽しめるお料理です。
個室に案内されましたので、奮発してお昼の懐石料理「清流」を頂きました。
ちなみにお値段4800円。
最初に出されたのが、「おから茶」。
香ばしくて、ほのかな甘みも感じられます。
おからをフライパン等で炒って水分を飛ばし、お茶と同じ様に入れれば家でも楽しめるそうです!
先付は、いろんな種類のお豆さん。
とってもかわいらしいです。
それぞれに食感や味比べもできて、楽しいです。
次に、呉汁。
呉汁とは、豆を裏ごしして味噌と合わせたもので、
湯葉と麩が入っていました。
あぁ美味しい・・・。
美しく盛られた、大豆料理を中心とした美味しいお料理が続きます。
ゴマダレのかかった湯葉も最高に美味しい!(湯葉好きゆえ・・・)
歯ごたえもさることながら、大豆の旨みと甘みが生きています。
季節の食材を使ったお料理は、目にも鮮やか。
ほおずきを器に見立てたり、青々としたもみじの葉が添えられていたり・・・。
細かく砕いた氷の真ん中に、くみ上げ湯葉が入った竹筒が登場。
思わず歓声があがります。
取り分ける器も、氷でひんやりと冷やされています。
大好物の湯葉や麩をお腹いっぱい頂けて幸せ
鮎の塩焼きを頂くときは、無言・・・(ものすごく真剣!笑)
幸せなひと時は、まだまだ続きます。
ぐつぐつと煮え立っている、湯豆腐と湯葉に舌鼓。
最後に、お漬物とお味噌汁。タコの炊き込みご飯。
すっかりお腹いっぱい&幸せいっぱい。
食べきれないご飯は、お持ち帰り用に包んで頂けます
そして、別腹の甘味の盛り合わせ。
最中の中には、抹茶アイスと小豆アイス。
食感を楽しめる麩も入っていました。贅沢なお味です~。
夏らしい、ミント味のゼリー。
中にはイチジクやスイカ、桃が入っています。
清涼感た~っぷり!色んな味が楽しめますね~。
竹の葉の香りがさわやかな、麩饅頭。
とってももちもちしていて、これまた美味なり。
店内は広く、和室の個室やカウンター、洋風のテーブル席まで多彩です。
お席によっては、外の美しい風景を愛でながらの食事が楽しめます。
お昼のメニューは・・・(11時~4時)
○茶壷三段弁当 1680円
○花籠膳 3種類 1890円~2940円
○懐石 三種類 3780円~6300円
夜のメニューは・・・(5時~11時・LO10時)
○東叡山会席
鳥取県の地鶏を使用した鳥すき・鳥つみれ鍋を中心としたコース
4200円~6300円
○調理長おすすめ会席 6300円~15750円
○ふぐ会席・すっぽん会席 8400円~
夜は一品料理も用意されているそうです
人気のお店ですので、電話で予約をして下さい。
お昼利用の場合、休日でしたので予約の電話をしました。
その時点で予約の枠は埋まっていたのですが、当日来店分の枠も設けているそうで、「少しお待ちいただくかも知れませんが、直接お越しください」との事でした。
少し前までは、全て予約席だったそうですが、当日直接のお客が入れないのは良くないとの事で、当日枠も設けたそうです。
お昼利用のねらい目(予約取れなかった場合)は、11時頃と、12時頃(11時のお客さんの食事が終わる頃)、だそうです。
◎後日、韻松亭で夜のお食事「鳥すき焼きコース」を頂きました。
記事はこちらです。
■お店情報
住所 東京都台東区上野公園4-59
電話 03-3821-8126
時間 11:00 - 16:00 / 17:00 - 23:00
定休 年中無休
2006年07月20日
プライスコレクション 若冲と江戸絵画
8月27日(日)まで、東京国立博物館・平成館にて
プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展
が開催されています。
プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展
が開催されています。
プライスコレクションとは、半世紀前に当時美術史家にも見過ごされていた江戸時代の個性的な画家たちの作品に目を奪われたアメリカのジョー・プライス氏が収集をしたコレクションの事。
プライスさんは、上方の画家(江戸時代の京都の画家は上方の画家といいます)である伊藤若冲(いとうじゃくちゅう1716-1800)の作品をメインに収集され、同じく上方の画家円山応挙(まるやまおうきょ 1733-1795)、長沢芦雪(ながさわろせつ 1754-1799)等の作品や江戸画家の作品を収集されました。そのコレクションの一部が、日本に里帰りしてきたわけです。
どうやら、この規模での日本への里帰り展は、最初で最後になるらしい!
テレビ東京「美の巨人たち」で、円山応挙の素晴らしい日本画を知り、さらに同じ番組で上方の画家の紹介があり、友人が大好きだと言っていた伊藤若冲の作品にも惚れてしまいました。
その作品を一堂に拝見できるとあって、浮き足立って東京国立博物館に向かいました。
プライスさん、ありがとう!
うんちく抜きで、鼻息荒く、感想を述べていきたいと思います。
写真は全て、今回の展示会のパンフレットを携帯カメラで撮ったものです。
一番上にある伊藤若冲の作品「紫陽花双鶏図」の、一部アップです。
どうですか?すごいでしょ??この足やトサカ。
そしてこのポーズ・・・
鶏の息づかいや羽の擦れる音、鳴き声が、今にも聞こえてきそうです。
この描写の細かさが、若冲の特徴になるのかな。
じっくりじっくり・・・いつまでも眺めていたいという衝動にかられます。
若冲の、トラの絵を眺めていた時、親切な年配の女性が、
「宜しかったら、これで見てみて。すごいわよ」と、私たちに単眼鏡を貸してくださいました。
すごいすごいっ!!驚愕です!!
毛一本一本、丁寧に描かれています。
しかも、よくみると、毛並みに沿った毛以外にも、逆らった毛まで丁寧に描かれています。
絵画の事は詳しくないのですが、普通の細筆では、ここまで細かく描けないのでは?
針の様な細い物を使って描いたのでしょうか・・・。
若冲の、細やかさと生き生きとした生き物の描写に感服。
「美の巨人たち」の説明では、若冲は鶏を描くと決めたら、まず鶏を飼って観察したそうです。
それも一年間!!
一年間、じっくり観察してから、二年目にようやく描き始めたそうなんですよ。
浮世離れしていますよね。
伊藤若冲は、京都・錦小路の青物問屋「枡源」の跡取り息子として生まれたのですが、絵を描くこと以外、世間の雑事には全く興味を示さなかったそうです。
そんな性格ですから、商売には熱心でなく、酒もたしなまず、一生独身でした。
40歳で財産や家業を全て弟に譲って隠居し、
念願の作画三昧の日々。
85歳で亡くなるまで、多くの作品を描いたそうです。
彼の生涯を知るだけでも、なんだか只者ではないですよね。
今で言う、変わり者。そして引きこもりだったのでしょう。
「鳥獣花木図屏風」の一部。
こちらも、伊藤若冲作です。
こちらも、伊藤若冲作です。
こんな絵・・・というか、作風、初めて拝見しました。
日本の画家で・・・しかも江戸時代に描かれたとは・・・。
日本の画家で・・・しかも江戸時代に描かれたとは・・・。
左下の部分のアップです。
説明しましょう。
これはタイルを使用したものではありません。
約1cm間隔で引かれたマス目に、色を塗っているのです。
そのマス目をよーく観察すると、さらに内側に別の色相を塗り重ね、立体感や質感を表現しているんです。
屏風ですから二枚あるのですが、実物はかなり大きい。
でも、ひとマス1cm。
半端ないです。
どうやってこの作品を書き上げたんだろうかと想像するだけで、気が遠くなりそう・・・。
先述の鶏の書かれた絵とは全く違い、コミカルなイラストにも見える画風です。
まるで、ぬいぐるみかと思うような愛らしい動物がたくさんいます。
右の屏風には獣たち。左には鳥達が描かれているのですが、動物達、いや、生きとし生けるもの全てがとっても幸せそうです。
私には、楽園に見えました。
見ているこちらまで、幸せな気分になります。
若冲の作品には、鳥がよく登場しています。
彼はきっと鳥が大好きだったんでしょうね。
どの鳥も、生き生きしていて、今にも羽ばたいていきそうです。
また、正面を向いた鳥が描かれていたりします。
正面を向いた鳥の絵って普段あまり見かけませんよね。
やっぱり、鳥を愛していたに違いないっ!
他にもたくさんの絵画がありました。
絵を見ると、江戸自体の庶民の生活や思想が伝わってきます。
鯉が滝登りをすると龍になるという話から描かれた絵。
三千年に一度花が咲き実が成るといわれた、不老不死の仙桃の絵。
若冲も、この桃を食べて、もっともっと長生きして、もっとたくさんの絵を残して欲しかったな。
今回はさらに、素晴らしい展示方法で、日本画の奥深さを再認識させられました。
それは、「 特別展示(光と絵画の表情)」のコーナー。
屏風をはじめ、数々の作品が、ガラス張りをなくして直接展示されているのです。
それだけではありません。照明の明るさや色を変化させ、、「自然光のように変化し、作品に表情を与える陰影ある光」を表現しているんです。
色は光。当たる照明の色味が変わると、当然作品の見え方が変わってきます。
そういえばそうだ!江戸時代には電気がない。
私が今作品を見ているのと同じに、見えていたわけではないんだ!
照明には、蛍光灯(白い光)と白熱灯(黄色っぽい光)が設置されていて、蛍光灯の光を徐々に弱くして白熱灯の光のみにし、さらに白熱灯の光も消えてゆくという感じ。
例えて言うなら、白昼の光から夕暮れになり、暗くなる・・・また明るくなるといった流れです。
日が沈むと、ろうそくの明かり(黄色味を帯びた温かみのある光。例えるなら白熱灯の様な色ですね。)だけで生活をしていた訳です。
ろうそくの明かりのような照明で柔らかく照らされた金屏風は、私たちが普段目にするような華やかで輝かしいものとは違い、深い黄土色の様な、渋い色合いになるんです。
ろうそくだけが照明だったわけですから、金屏風にろうそくの光が反射して、なんとも言えない美しい空間をつくっていたんでしょうね・・・。
光の変化により、絵画の色合いが微妙に変化していくのが実感できる、すばらしい展示方法だと思いました。
これは、プライスさんの意向によるもの。
ガラスケースなしで、照明を変化させるなんて、保存環境や防犯上の問題で、普通は実現できないですよね。
プライスさんのお陰で、普段は気付かなかった事に、たくさん気付くことが出来ました。
プライスさん、感謝です!
まだまだ沢山感想を伝えたいのですが、これ以上長文になっちゃうとえらいこっちゃなのでこれぐらいで。
あ!もうひとつだけ!
それは幽霊。
二つの幽霊画がありました。
長沢芦雪の「幽霊図」
切れ長の目をした美しく妖艶な幽霊。
腰から下が薄くなって足はありません。
・・・私だけかもしれませんが、右から見ても左から見ても、目が合うんです。こわい!
呉春(幽霊)と松村景文(柳)の「柳下幽霊図」
照明が変化するコーナーに展示されていました。
ふと見ると、照明が消えていた時。
ギャー!!
鳥肌が立ちました。怖すぎます。
顔が大きく青白い。やや白目を剥き、髪を歯くわえています。
恨めしい気持ちたっぷりの表情・・・。
いやぁ~参りました。
・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展は、
京都・福岡・愛知にもやってきますよ。
2006/9/23~11/5 京都国立近代美術館
2007/1/1~2/25 九州国立博物館
2007/4/13~6/10 愛知県美術館
少しでもご興味を持たれたら、是非是非、生で観て、全身で感じて下さい!
また、「若冲と江戸絵画」展 コレクションブログがあります。
それぞれの作品について、説明と絵画の写真が見られます。
参考にどうぞ。
○「紫陽花双鶏図」
○「鳥獣花木図屏風」
○「幽霊図」
○「柳下幽霊図」
○プライスさんのメッセージ
・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
プライスさんは、専門家ではなく江戸絵画を愛するコレクターのひとり。
24歳の時、当時まったく有名ではなかった伊藤若冲の作品に触れ、コレクションをはじめたのです。
今回の展覧会で、プライスさんは純粋に江戸絵画を、そして伊藤若冲を愛して下さっているのだと痛感しました。
プライスさん、愛してくれてありがとう!
あなたのお陰で、日本の素晴らしい作品の数々、江戸絵画の素晴らしさを知りました。